「陳腐なCM」という民進党の大西議員の発言に対し、訴訟を起こした高須院長。お怒りの気持ちもごもっともです。CMには院長や病院関係者、それに制作に関わった多くの人たちの思いもあるでしょうし、当然費用も掛かっています。
陳腐なCMの代表の様に言われてしまっては腹も立つでしょうし、前後の発言の流れで(大西議員の意図するところではないでしょうが)悪徳業者であるかのようにも聞こえました。
「陳腐」という表現や具体的なCM例を挙げたことに関して、大西議員を弁護する気はありませんが、今回は「医療広告の規制」に関してのお話を。
医療法による広告の規制
病院に関する広告は医療法で規制されていて、自由に広告を作ることは出来ません。詳しくは厚生労働省のWEBページにその法律の概要やガイドラインが掲載されていますが、広告して良い内容がかなり細かく規定されています。
ですので、その規制の中で広告を作っていかなければならないわけです。
これによって自由な表現が規制され、病院名と電話番号しか言えない「陳腐なCM」しか作れない、世に出せないのが現状だと大西議員は言ったんでしょうね。
確かに10年ちょっと前だと、病院名と診療科名電話番号や所在地、診療日時、入院施設の有無くらいしか広告できませんでした。基本的に病院は広告しちゃダメって考えだったんでしょうね。それが時代とともに緩和されてきて、広告できることはかなり増えてきているんです。
病院の理念とか姿勢、治療方針などを美しい映像とともに紹介するようなCMも可能だと思います。ただ、15秒のテレビCMで、こと美容外科となると、規制が無くても「目立ってなんぼ」が効果的かも?という気もしないではないです。
現在の医療法では虚偽の広告、誇大広告、客観性を証明できない内容の広告などはもちろんNGですし、比較広告も禁止されています。
美容外科の場合「キレイになる」かどうかは客観的な判断は出来ないので、そこは広告できないわけです。
「ゴッドハンドを持つ外科医」と言うのはマズそうですが、
「テレビ番組でゴッドハンドと紹介された外科医」と言えばいいのか?というと、そもそもゴッドハンドの定義もないわけで、これもNGでしょう。
「私、失敗しないので」は、人気ドラマのパクリかどうかは置いておいて、インパクトもありそうなコピーになりそうですが、何をもって成功・失敗というか、これも難しいでしょう。
治療の効果やビフォーアフターも広告は出来ませんので、そのあたりは緩和されると広告表現も変わってくるのかもしれません。
例えばライザップの広告みたいに、患者さんのビフォーアフターを見せたら・・・インパクトも説得力もありそうですが、いろいろ問題も出てきそうですね。ただ、それが「陳腐」でないかというと・・・どうなんでしょうね?機会があれば大西議員にどういうCMが望ましい(陳腐じゃない?)とイメージしていらしゃるのか聞いてみたいですね。
陳腐かどうかはさておき、広告の自由度が高まると、広告の作り方が上手かったり、広告予算をかける病院が目立つような状況になってしまい、却って患者が迷うのでは?というのも危惧されるような・・・考えすぎかな。
ホームページは広告ではなかった?
また、メディアではあまり取り上げられていませんでしたが、大西議員はテレビCMは厳しく規制されている一方で、ホームページの情報が規制されていなかったことやフリーペーパーなどの違法な広告が野放しになっている現状のアンバランスを訴えています。
私も知りませんでしたが、医療法の「広告の定義」も問題のようです。
簡単に言うと、不特定多数というか誰の目にもつくものは「広告」として規制の対象となり、情報を求める人が自ら手に取るものは「広告」ではないとしています。
例えば、テレビCMや新聞広告、チラシ、看板などは広告であり、
一方で
・病院内に置いてあるパンフレット
・病院のWEBページ
などは広告ではないとして、医療法の対象にはなっておらず、ある程度自由な表現や情報提供が可能なわけです。
WEBページが広告ではないというのはちょっと意外ですが、検索、QRコード、URL入力など自らのアクションが無いと閲覧できないという考えに基づいているようです。一方でWEBページに誘引するためのバナー広告は、広告となるわけです。
WEBページの内容にもガイドラインこそ設けられてはいますが、医療法の対象外で、行政指導 はあっても罰則はなし、現状は無法地帯とは言わないまでも、やったもん勝ち、他所もやっているからとガイドラインに違反しているものも少なくないように見受けられます。
WEBページも広告扱いとして規制していくようですが、すぐに対応していくのは難しいのではないかと思います。
規制緩和よりも客観的な情報提供を
とはいうものの、
今どきの生活者は、病院が公開しているWEBページはあくまで広告として認識していて、参考にはしても、鵜呑みにはしておらず、口コミサイトなど客観性が高そうな情報にアクセスしたり、知人などからのリアルな口コミを参考に病院を選んでいると思います。
そういう意味では広告規制を緩和することよりも、客観的な情報を提供できる公的な仕組みを構築していただきたいものです。
さて、医療法の広告規制に関して書いてきましたが、マッサージや鍼灸はまた別の法律で規制されていて、こちらはかなり厳しく規制されています。そして国家資格ではない整体やカイロプラティック、気功などは規制する法律がありません。
なんか理不尽に思えますが、次回はそのあたりをお話ししたいと思います。