このところ「就活」ならぬ「終活」ブームもあって、生きている間に財産分与だけではなく、自分の葬儀やお墓などまで自分で決めておくなんてこともよくあるようです。
まあ葬儀業界、最近はフューネラルビジネスなんてしゃれた名前で呼ばれたりしていますが、そういった業界の方々が仕掛けている感じは否めませんが、少子高齢化、核家族化が進む中、亡くなった後に遺族が困ることの無いよう、迷惑をかけないように準備しておくことは必要なのかもしれません。
さて、今回はそんな中の一つ、葬儀について考えてみましょう。
そもそも葬式って何?
お通夜、告別式、葬儀、葬式、それぞれ言葉の定義はあるのでしょうが、ここではまとめて葬式として考えます。葬式とは、親族や知人が亡くなった人に別れを告げ、あの世に送る宗教的な儀式のこと。
歴史的には6万年も前にネアンデルタール人が葬儀を行っており、日本では縄文時代からあったとされています。
現在の日本の葬式は9割以上が仏式で行われているそうで、以前記事に書いた日本人の信仰する宗教の割合からするとちょっと不思議な感じがしますが、明治以前の寺請制度、檀家制度の名残なんでしょうかね。
また葬式を行う場所ですが、少し前の時代は亡くなった方の自宅やお寺で行っていた記憶がありますが、最近では葬儀会館で行うのが一般的になっているようです。
葬式は誰のためのもの?
葬式は誰のために行うのか?これは様々な要素が絡んでおり断言するのは難しいのですが、葬式の意義を考えていくと、なんとなく見えきます。
宗教的な意義
仏式であれば故人に成仏していただくための宗教儀式です。
仏教における死後の世界についてはまた別の機会にさせていただきますが、僧侶がお経を読み、故人の霊をあの世(彼岸)に送ります。
聞くところによると僧侶の読むお経には呪文も含まれていて、これが死者の霊に何か働きかけることができるんだそうです。
化学的な根拠がない話が続きますが、僧侶から聞いたお話をあと少し。
死者が多く出た事故現場などで僧侶がお経を読むと多くの霊が集まってくるなんて話を聞きました。また、自殺や突然の事故で亡くなった方の霊が成仏できずこの世にさまよっていることが多いとも聞きます。自分が亡くなったことに気づいていないことが理由だとか。
そういった霊に「あなたは亡くなったんだよ。あの世で幸せになってくださいね。」と導くのも葬儀であったり、お経の役割なんだそうです。
また、仏教には多くの家族や知人の故人への思いが、亡くなった方が行く世界(天国~地獄)に影響するという考えもあります。
信じるか信じないかはさておき、亡くなった方に成仏してもらうためというのは葬式の意義の一つです。
心理的な意義
大切な人がいなくなり、残された家族や親しかった人たちにとって精神的なダメージはとても大きいと思います。
しかしその気持ちを引きずっていることは亡くなった方も望んではいないでしょう。葬式はそういった気持ちを切り替える、区切りをつけるという意義もあります。
家族を失った直後は何も考えられない状態になっているかもしれませんが(ある意味義務的にでも)葬儀を行わなくては!とその間は準備や弔問客の対応などで気が紛れることもあるかもしれません。このように葬式は遺された人々の(心のケアの)ためという見方もできます。
社会的な意義
故人と交流があった人々にその死を知らせ、またお別れの機会を作るという意義もあります
葬式は「喪主」が仕切りますが、昔は「この家の長はこれからこの喪主が務めます。」というお披露目の意味があったそうです。跡継ぎが喪主を務めるのが慣習だったんですね。
また、葬儀は親族のためという面もあります。
自分がお寺とは付き合いが無いと(仏式の)葬儀は不要と考えがちですが、そこは親戚の方の意見なども聞いてみてください。実は田舎のお寺さんと深い付き合いがあったなんてこともあるんです。葬儀の当日に「こんな葬式ではダメでしょ!すぐにどこどこのお坊さん呼びなさい!」なんてことになったら大変ですよね。
お金をかけること=よい葬式ではない
このように葬式には多くの人の思いや生活が関係しています。一人の考えで決めてしまうのどうかと思います。
多様化する葬儀
「葬式は必要ですか?」と聞かれたら…必要だと答えます。しかしそれは葬儀業者に任せるようなお葬式をやりなさいということでありません。大切なのは遺された人たちの気持ちなんだと思います。
ただ故人の希望があったのなら、可能な限りそれは叶えてあげたい気もします。
生きている間に葬式のことを話すのは縁起でもないことかもしれませんが、知人や親せきの葬儀に参加した際など何らかの機会にそんな話をしておくもの良いのかもしれませんね。
最近では葬式は不要と、式を行わず直接火葬場へという「直送」(特に首都圏で多い)や葬式を行うにしても、身内だけで「家族葬」を行うケースも増えています。
また故人の遺志によりこうしますというような注釈がつく葬式も増えている気がします。例えば「故人の遺志により身内だけで」「故人の遺志により、御香典は辞退させていただきます」というようなことです。
形式にこだわらず後悔のないように
社会的に地位が高い人だから・・・と葬儀業者さんはいろいろ提案してくるかもしれませんが、派手に装飾されたり演出された式が必ずしも良いというわけではありませんよね。生前に多くの方と交流がある方が(本人の意思で)身内だけの葬儀を行ったとしても、それは別に「お別れの会」というようなものを行えばよいのですし、芸能人でもそのような例は結構ありますよね。
あ、小さな葬儀をおススメしているというわけではありませんよ。
自分が死んだら東京ドームみたいに大きな会場で盛大にやってくれ!という故人の遺志があればドームは無理にしても、出来る範囲でやってあげたいし、音楽が好きだからバンド演奏で送って欲しいのであれば、そういうこともありなんじゃないかと思います。
そういう希望や家族のしがらみなど含めて葬儀業者に相談してみてもよいかもしれません。
一昔前だと、葬儀屋さんは家を見て葬儀費用を決める(ふっかける)なんて言われていましたが、最近では明朗会計の業者が多いですし、イオンなど大手もやっていますので、ボッタくりは少ないと思います。ただ葬儀の前後は落ちついて考えることなく追加の提案などを受け入れてしまうこともあり、終わった後に請求額を見てビックリということもまだまだあるようですので気を付けてください。
話が逸れてしまいましたが、誰のために葬式を行うのか?ということを考え、どんな葬式を行えばよいのか(あるいは行わないか)を決めるとよいでしょう。
もし迷ったら、簡単でも葬儀は行っておくことをおススメします。葬儀をやっておけばよかったと後から思っても、やり直しはできません。
自分や家族だけではなく周りの人のことも考え、後悔することのないよう選択をしましょう。